物欲子(ぶつよくこ)のブログ

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『古代メソポタミア飯 ギルガメシュ叙事詩と最古のレシピ』を読んでみる。感想と気になるレシピ

先日、『古代メソポタミア』という面白い本を見つけました。古代メシレシピを紹介する本で、料理の写真もとても美味しそうでした。古代エジプトなどに比べるとイメージの薄い(?)「古代メソポタミア」ですが、何食べていたのかとても気になります。本の内容と気になったレシピなどを紹介していきたいと思います。

本の構成

 

本は3章に分れ、第①章は『ギルガメシュ叙事詩』の物語の内容。*1 第②章が古代メソポタミアの地理、第③章がレシピ集となっています(①も②もたいへん面白いです)。

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遠藤雅司『古代メソポタミアギルガメシュ叙事詩と最古のレシピ』大和書房2020

「古代メシ」レシピについて

 

紹介されるレシピは28種類パン④、野菜添え物②、だし①、煮込み料理⑤、魚料理②、肉料理⑥、お菓子④、飲み物④)。レシピの出典は、イェール大学所蔵の粘土板(古バビロニア時代)などからです。

 レシピのページには楔形文字の原文も添えられ、どのように書かれていたかがわかります。しかし、現代のクックパッドのように書かれているわけではなく、意味不明な言い回しもちらほら(カタコト?)。ここから、実際使えるレシピに仕上げるのはなかなか大変だったと思います。

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ギルガメシュ叙事詩」と楔形文字 パブリック・ドメイン, Link

「古代メソポタミア」の食材(食料が豊富だからこそ古代文明が起こった)

 

これは想像以上に豊かで驚きました。

古代メソポタミアの野菜はタマネギ・にんにく・(ポロ)ネギが3大定番で、豆料理ヒヨコ豆・レンズ豆も多かったそうです。その他の野菜は、コリアンダー・クレソン・エシャロット・ビーツ・カブ・ルッコラ・レタスなど。

肉は、牛*2ガチョウ、鶏、鴨など。また、魚の種類はたいへんに豊富で、淡水魚・海水魚の両方が獲れ、2500種以上(!)の魚の名称が見られるそうです。

それ以外の食材として卵、ゴマ、ピスタチオなど。

また、果物はサクランボ・プラム・アプリコットざくろ・ぶどう・レーズン・いちじく・デーツなどと豊富でした。

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ナツメヤシの実(干すと甘いデーツになる) Anuraj RVによるPixabayからの画像 

(羊、ヤギ、牛)も飲まれましたが、冷蔵庫の無い時代、消費期限はかなり早く、それもあって一般の人の口には入らなかったようです(そのため、チーズやバター、サワークリームなどの加工品を製造していたのだとか。)

 

こうした豊かな食材を調理する調味料として、塩・酢・魚醤・ビールなどがありました。(砂糖だけはまだ無かったそうで、それでもハチミツや果物でお菓子も作っていました)

そして、少ない調味料を補うのはハーブでした。コリアンダー、クミン、マスタードシード、ミント、フェンネルシードなどが再現レシピに見られます(昔の人は、美味しい草や香味草についてすごい目利きだったことでしょう)。

‥ということで、これだけの食材があればもう何でも作れそう!無いのは複雑な調味料くらいでしょうか?

以前読んだ『ファラオのレシピ』でも、古代エジプトが食料の宝庫であることにたいへん驚いたのですが(川の氾濫の時期は魚を捕る必要もない。うち上げられてピチピチしているなど)、今回も「古代メソポタミア」の食の豊かさには本当に驚きました。

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「ファラオのレシピ」大英博物館ミュージアム図書2000

食料が豊かだからこそ人が増え、古代文明が起こった、という成り立ちを(当たり前なのかもしれませんが)この本を読んで改めて感じました。

 

レシピ① 今のパン屋でも売ってそう!美味しいそうな『パン』

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長ネギミルフィーユパン「セベトゥ」

引用:『古代メソポタミアギルガメシュ叙事詩と最古のレシピ』72p

さて、実際に紹介されているレシピを数品取り上げます。

長ネギミルフィーユパン「セベトゥ」は、今のパン作りと同じような要領で大麦粉・小麦粉や牛乳、オリーブオイルの他、すりおろした長ネギをいれて焼いたパン。巻いた形がとても可愛いのですが、「形のよいパン」としか手がかりがないのだそうです。

また、セベトゥは無発酵パンですが、発酵したパンや肉パイのレシピなども紹介されています。

レシピ② 圧巻の『肉料理』

 

煮込んだ肉や牛肉のオーブン焼きも実に美味しそうだったのですが、

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羊の香草焼き「ヒルツム」

引用:『古代メソポタミアギルガメシュ叙事詩と最古のレシピ』128p

古代メソポタミアぽい(?)「羊の香草焼き」を取り上げました。当時は、神様と王様くらいしか食べれないご馳走でも、今では簡単に家で作れるのも嬉しいです。

クシ切りにした玉ねぎ・羊肉をオーブンの天板に並べ、みじんにしたルッコラコリアンダー・長ネギを加えて焼けば完成です。塩だけでもう十分いけますね!

 

レシピ③ 今すぐ食べたい!『ドライフルーツ入りケーキ』

 

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神様へのお供えフルーツケーキ「ギルラム」

引用:『古代メソポタミアギルガメシュ叙事詩と最古のレシピ』160p

こちらも神様用の高級スイーツ。今売られてても上等なお菓子の類いです。小麦粉、バター、牛乳、塩、ハチミツに、デーツ・干しリンゴ・ザクロの豊富な果実が入っていて、間違いなく美味しいケーキだったことでしょう。

 

 ビールとパンは常食?

 

さて、『ギルガメシュ』にはビールとパンの記述が多く、確かにこの2つがあれば食事になるな、と個人的にも思います。ちなみに主食は大麦から作ったパンであったとか。

また、古代メソポタミア人はビールが好きだったようで、多種多彩なビール醸造の記述は読んでててうらやましくなりました。*3  

ビールのほかワインも飲まれましたが、こちらは輸入品であったようです。

 

本の中でビールやワインの「古代メソポタミア風」飲み方が紹介されていました。これはすぐにでも実践できます。お酒にデーツやハーブコリアンダーヨモギほか)を入れてしばらくおいてから飲む、という簡単なもので不味いビールやワインがあれば試してみてもいかもしれません!

 

最後に

 

本の著者は遠藤雅司まさしさん。「歴史料理」の再現に取り組んでいる歴史料理研究家の方で、他にも「歴メシ」本を何冊か書いてみえます。

歴メシ!  世界の歴史料理をおいしく食べる

歴メシ! 世界の歴史料理をおいしく食べる

  • 作者:遠藤雅司
  • 発売日: 2017/07/24
  • メディア: 単行本
 
英雄たちの食卓

英雄たちの食卓

  • 作者:遠藤 雅司
  • 発売日: 2018/03/15
  • メディア: 単行本
 

今回、取り上げさせて頂いたレシピ以外を見てみたい方は是非、実際の本で確認してみて下さい。総じて美味しそう!今でも似た料理食べてるなとか、きっと色々と感じることがあると思います。

‥ということで、『古代メソポタミアギルガメシュ叙事詩と最古のレシピを読んでみる』でした!以上です、ではまた!

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メソポタミアの町 Tuna ÖlgerによるPixabayからの画像

*1:古代の伝説的な王様ギルガメシュの冒険譚。

*2:お供えの羊は草肥羊、穀肥羊、雌羊、子羊と書き分けられていました。味もきっと違うのでしょう。

*3:大麦から作るもの、フルーツやハチミツをいれるもの。甘いビールとか黒、赤、茶とか、洗練・上質とかビールの語彙も豊富。