『古代メソポタミア飯 ギルガメシュ叙事詩と最古のレシピ』を読んでみる。感想と気になるレシピ
先日、『古代メソポタミア飯』という面白い本を見つけました。古代メシレシピを紹介する本で、料理の写真もとても美味しそうでした。古代エジプトなどに比べるとイメージの薄い(?)「古代メソポタミア」ですが、何食べていたのかとても気になります。本の内容と気になったレシピなどを紹介していきたいと思います。
- 本の構成
- 「古代メシ」レシピについて
- 「古代メソポタミア」の食材(食料が豊富だからこそ古代文明が起こった)
- レシピ① 今のパン屋でも売ってそう!美味しいそうな『パン』
- レシピ② 圧巻の『肉料理』
- レシピ③ 今すぐ食べたい!『ドライフルーツ入りケーキ』
- ビールとパンは常食?
- 最後に
本の構成
本は3章に分れ、第①章は『ギルガメシュ叙事詩』の物語の内容。*1 第②章が古代メソポタミアの地理、第③章がレシピ集となっています(①も②もたいへん面白いです)。
「古代メシ」レシピについて
紹介されるレシピは28種類(パン④、野菜添え物②、だし①、煮込み料理⑤、魚料理②、肉料理⑥、お菓子④、飲み物④)。レシピの出典は、イェール大学所蔵の粘土板(古バビロニア時代)などからです。
レシピのページには楔形文字の原文も添えられ、どのように書かれていたかがわかります。しかし、現代のクックパッドのように書かれているわけではなく、意味不明な言い回しもちらほら(カタコト?)。ここから、実際使えるレシピに仕上げるのはなかなか大変だったと思います。
「古代メソポタミア」の食材(食料が豊富だからこそ古代文明が起こった)
これは想像以上に豊かで驚きました。
古代メソポタミアの野菜はタマネギ・にんにく・(ポロ)ネギが3大定番で、豆料理(ヒヨコ豆・レンズ豆)も多かったそうです。その他の野菜は、コリアンダー・クレソン・エシャロット・ビーツ・カブ・ルッコラ・レタスなど。
肉は、牛、羊*2、ガチョウ、鶏、鴨など。また、魚の種類はたいへんに豊富で、淡水魚・海水魚の両方が獲れ、2500種以上(!)の魚の名称が見られるそうです。
それ以外の食材として卵、ゴマ、ピスタチオなど。
また、果物はサクランボ・プラム・アプリコット・ざくろ・ぶどう・レーズン・いちじく・デーツなどと豊富でした。
乳(羊、ヤギ、牛)も飲まれましたが、冷蔵庫の無い時代、消費期限はかなり早く、それもあって一般の人の口には入らなかったようです(そのため、チーズやバター、サワークリームなどの加工品を製造していたのだとか。)
こうした豊かな食材を調理する調味料として、塩・酢・魚醤・ビールなどがありました。(砂糖だけはまだ無かったそうで、それでもハチミツや果物でお菓子も作っていました)
そして、少ない調味料を補うのはハーブでした。コリアンダー、クミン、マスタードシード、ミント、フェンネルシードなどが再現レシピに見られます(昔の人は、美味しい草や香味草についてすごい目利きだったことでしょう)。
‥ということで、これだけの食材があればもう何でも作れそう!無いのは複雑な調味料くらいでしょうか?
以前読んだ『ファラオのレシピ』でも、古代エジプトが食料の宝庫であることにたいへん驚いたのですが(川の氾濫の時期は魚を捕る必要もない。うち上げられてピチピチしているなど)、今回も「古代メソポタミア」の食の豊かさには本当に驚きました。
食料が豊かだからこそ人が増え、古代文明が起こった、という成り立ちを(当たり前なのかもしれませんが)この本を読んで改めて感じました。
レシピ① 今のパン屋でも売ってそう!美味しいそうな『パン』
長ネギミルフィーユパン「セベトゥ」
さて、実際に紹介されているレシピを数品取り上げます。
長ネギミルフィーユパン「セベトゥ」は、今のパン作りと同じような要領で大麦粉・小麦粉や牛乳、オリーブオイルの他、すりおろした長ネギをいれて焼いたパン。巻いた形がとても可愛いのですが、「形のよいパン」としか手がかりがないのだそうです。
また、セベトゥは無発酵パンですが、発酵したパンや肉パイのレシピなども紹介されています。
レシピ② 圧巻の『肉料理』
煮込んだ肉や牛肉のオーブン焼きも実に美味しそうだったのですが、
羊の香草焼き「ヒルツム」
古代メソポタミアぽい(?)「羊の香草焼き」を取り上げました。当時は、神様と王様くらいしか食べれないご馳走でも、今では簡単に家で作れるのも嬉しいです。
クシ切りにした玉ねぎ・羊肉をオーブンの天板に並べ、みじんにしたルッコラ・コリアンダー・長ネギを加えて焼けば完成です。塩だけでもう十分いけますね!
レシピ③ 今すぐ食べたい!『ドライフルーツ入りケーキ』
神様へのお供えフルーツケーキ「ギルラム」
こちらも神様用の高級スイーツ。今売られてても上等なお菓子の類いです。小麦粉、バター、牛乳、塩、ハチミツに、デーツ・干しリンゴ・ザクロの豊富な果実が入っていて、間違いなく美味しいケーキだったことでしょう。
ビールとパンは常食?
さて、『ギルガメシュ』にはビールとパンの記述が多く、確かにこの2つがあれば食事になるな、と個人的にも思います。ちなみに主食は大麦から作ったパンであったとか。
また、古代メソポタミア人はビールが好きだったようで、多種多彩なビール醸造の記述は読んでててうらやましくなりました。*3
ビールのほかワインも飲まれましたが、こちらは輸入品であったようです。
本の中でビールやワインの「古代メソポタミア風」飲み方が紹介されていました。これはすぐにでも実践できます。お酒にデーツやハーブ(コリアンダーやヨモギほか)を入れてしばらくおいてから飲む、という簡単なもので不味いビールやワインがあれば試してみてもいかもしれません!
最後に
本の著者は遠藤雅司まさしさん。「歴史料理」の再現に取り組んでいる歴史料理研究家の方で、他にも「歴メシ」本を何冊か書いてみえます。
今回、取り上げさせて頂いたレシピ以外を見てみたい方は是非、実際の本で確認してみて下さい。総じて美味しそう!今でも似た料理食べてるなとか、きっと色々と感じることがあると思います。
‥ということで、『古代メソポタミア飯 ギルガメシュ叙事詩と最古のレシピを読んでみる』でした!以上です、ではまた!
メソポタミアの町 Tuna ÖlgerによるPixabayからの画像