物欲子(ぶつよくこ)のブログ

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【書籍】『高速ジャンクション&橋梁の鑑賞法』(高速ジャンクション愛と美しい写真に魅了される)

高速ジャンクション」、上から見ると実に綺麗ですが、それ以外、一体どーやって鑑賞するのか

こうした悩みに応えてくれたのが、2019年に発売された『高速ジャンクション橋梁の鑑賞法』(講談社2019)という本でした。

今回は、この書籍の内容・魅力について書いていきたいと思います。

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監修:首都高速道路株式会社・阪神高速道路株式会社ほか

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異様さ?複雑怪奇? 引用:『高速ジャンクション&橋梁の鑑賞法』6P

17の選抜されたジャンクション

 

まず、特に印象深い、17のジャンクションが取り上げられています。関東・関西のジャンクションばかりで少し残念なのですが、それぞれのジャンクションが、4ページほどの構成で紹介されています。*1

各JCTを紹介する中で、見どころ・見かた、写真の撮り方など、丁寧な解説が挟まれ、初心者にも分かりやすい、やさしい構成となっています。

中でも、かっこよかったジャンクションを見ていきたいと思います。

 

JCT界のヤマタのオロチ?『箱崎ジャンクション

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引用:『高速ジャンクション&橋梁の鑑賞法』22p

JCT界の王様という「箱崎ジャンクション(東京都中央区

荒ぶる橋げたが迫力があってとてもいい写真ですが、何本も出た橋梁・複雑な構成から、ヤマタのオロチにも例えられるのだとか。

どこにそんなマニアがいて、そんな名前をつけているのか。そうした愛好者がいるということも、もう本当に新鮮な驚き。目からウロコです。

また、どこから撮影するといい写真が撮れるとか、時間帯までお薦めしてくれているので、JCT目あてで行く際は、この本持っててもいいな、と思うのです(あるのかなそんなこと?でもあるかも)

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昼間の「箱崎JCT おむこさん志望 -, CC 表示 2.5, Link

分岐・合流地点を真正面から撮ると、こうした迫力ある写真になるということで、確かにかっこよくて、動的。ナルホド、勉強になります。

他に、鑑賞ポイントとして、立体交差橋脚カーブ、高速ならではのパーツ付属設備背景が取り上げられていました。

 

美しいループ『天保山ジャンクション』(大阪市港区

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引用:『高速ジャンクション&橋梁の鑑賞法』30p

この美しくダイナミックな「天保山てんぽうざんジャンクション」を見に、昼夜ファンが訪れる、と本文に紹介されていました。

ファンがついてるジャンクション?そんな世界があったとは‥です。

でも、ネットで検索してみると、ライトアップされ、青色の闇に浮かぶ綺麗な写真をいくつも拾うことができ、撮りに通う人がいることも納得の美しさだな、と感じました。

 

金色に輝く『大黒ジャンクション』(横浜市鶴見区

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『高速ジャンクション&橋梁の鑑賞法』46P

 こちらは、ナトリウムランプで金色に輝くことから流星ともあだ名される(?)「大黒ジャンクション(こういう愛称があると、JCTもより身近に感じられます)

高速といえば、あのオレンジ色のライト(ナトリウムランプ)のイメージ確かにあります。

現在、首都高ではLEDに切り替え中で、大黒JCTも「流星」じゃなくなる日が来るのかもしれないとの話。

あのオレンジ色、どこか情緒的で、心が落ちつくような好ましいもので、無くなってしまったら、とても寂しいのですが‥。

 

また、下から見上げる、裏面の補強のパーツや裏面吸音板、荷重を支える橋脚の種類など、どういう構造であるのか、という説明も興味深いです。

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分かりやすい橋脚の説明 引用:『高速ジャンクション&橋梁の鑑賞法』45P

個人的には高所恐怖症のため、高速に乗ったり、下から眺めることにすら恐怖感があったのですが、構造の説明を読むと荷重を考えての設計なんだなということがうっすらと分かり(当り前の話なのでしょうが)、JCTへの見方も少し変わります。

JCTの形

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引用:「ジャンクションの形状」より(『高速ジャンクション&橋梁の鑑賞法』76P)

少し見づらいですが、様々なJCTの形状。

こうした空撮写真の方がイメージありました。クローバー型の「鳥栖とすJCT佐賀県鳥栖市などは取り上げられることも多く、知名度高いイメージです。

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こちらは、タービン型の美しい「清洲きよすJCT」(愛知県清須市

Copyright © 国土画像情報(カラー空中写真) 国土交通省, Attribution, Link

【公団ゴシック】

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「公団ゴシック」とやら(引用『高速ジャンクション&橋梁の鑑賞法』97p)

この高速独特のフォント、見たことあります!

名前があったの?ですが、その名も「公団ゴシック」というのだとか。

標識120m手前で認識できるよう、考えて作られていて、1文字1文字の制作コストや文字のばらつき問題から、2010年廃止になり、現在、高速道から消えつつあるのだそうです。

 

【クロソイド曲線】

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クロソイド曲線 D.328 2008/11/4 10:38 (UTC) , CC 表示-継承 3.0, Link 

車両が、一定の速度で、一定の角度でハンドルを切っていた場合に描くゆるやかなカーブが「クロソイド曲線」で、自然な運転になるため、高速にはしばしば使われます。

そうしたクロソイドの解説もあり、また高速のどこがクロソイドかを探す、クロソイド探しも楽しそう!、と思うのです。

 

橋梁大図鑑

 

本の後半部分は、高速も走る、特徴的な12の「」の紹介です。*2

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近江大鳥橋(信楽ICー大津JCT) W-nexco, CC 表示-継承 3.0, Link

中でもかっこよかったのが「近江大鳥橋おうみおおどりはし」(2008年から供用開始)で、鳥をイメージしたという特徴的なフォルムが、緑に映えて美しいです。

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近江大鳥橋下り線側全景 W-nexco , CC 表示 3.0, Link

この橋、「エクストラドーズド橋」とかいう聞いたこともないタイプの橋で、主塔(鳥の翼の部分)から張った斜めのケーブル角が水平に近いのも特徴の1つなのだそうです。

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名港トリトン Oka21000 , CC 表示-継承 4.0, Link

上の名港トリトンのような「斜長橋しゃちょうきょう」というタイプの橋と比べると、主塔の高さ、ケーブル角が違うのが分かります。主塔に高さがある方が長い距離向きなんだな、とやっと気づいた次第。

こうしたケーブルを使った吊り橋は、見た目が不安だったのですが(風で揺れそうで)、長距離運用の橋で、強度的に対策された橋であることなども分かりました。

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橋の用途と形式 (引用『高速ジャンクション&橋梁の鑑賞法』82p)

 

最後に

 

‥ということで、何をどーみたらいいのかよく分からなかったJCTですが、上から見るだけでなく、下から見ても楽しいよ!ということを教えてくれたのがこの本。

見て美しい角度・場所がある。構造物として見る。また、高速独特のトリビアなど、何十年と見てる割には、何の理解もなく、魅力にも気づけてなかったな、と思った今回でした。

私のような「JCTの見方が分からないけど‥」という人に読んで欲しいと思いつつ‥、以上、『高速ジャンクション&橋梁の鑑賞法』でした!ではまた!

*1:関東:西新宿・箱崎・両国・堀切・大黒・江北・生麦・江戸橋・浜崎橋・久喜白岡・有明・東雲。関西:阿波座天保山久御山・りんくう・北港

*2:港大橋、関門橋、レインボーブリッジ、名港中央大橋かつしかハープ橋天保山大橋、五色桜大橋、新富士川橋、近江大鳥橋、大三島橋神戸大橋、灘浜大橋。