【中山道】奈良井宿と難所・鳥居峠(『初恋』(島崎藤村)の前にさしたる花櫛ってどんな櫛?)
前回ブログからの続きです。中山道の「藪原やぶはら宿」から鳥居峠を経由し、「奈良井ならい宿」、そして漆器の町「木曽平沢ひらさわ」を歩きます。
中山道・難所の1つ・鳥居峠を越えて、伝建地区・奈良井宿の美しい町並みを満喫できるルートで、天気が良ければ、御嶽山おんたけさんも望むことができます。
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①「藪原宿」
JRの藪原駅で降りて、町並みを散策していきます。
やがて、街道は藪原を抜けて、山の中へと入っていきます。藪原宿から奈良井宿までは約8㎞、所要時間は3時間30分位。整備された歩きやすい道です。
②鳥居峠
この辺りがこの浮世絵のモデルになった場所といいますが、こんな見晴らしは今のこの場所からは、望めません。
昔の鳥居峠は、中山道3大難所の1つだであったといいますが*1、今は相当整備されていて、谷沿いの道の恐怖も昔とは雲泥の差なのかもしれません。
晴れていたので、当然見えると思った御嶽山ですが、この日はかなり暖かく、あいにく見ることはできませんでした。
また、この神社の裏手には神社に奉納された石碑群があり、御嶽山への厚い信仰を感じることもできます。
この御嶽遥拝所まできたら、鳥居峠はもうすぐそこ。
さて、この石碑の建つ鳥居峠は見晴らしのいい場所ではなく、道沿いにあり、あれ?ここかという感じ。
この鳥居峠が分水嶺となり、北側に流れたものは奈良井川となり、犀川、千曲川、信濃川という錚々たる大河となり、日本海へ。また南側へ流れたものは木曽川となり、太平洋へ流れます。
昔の「峠の茶屋跡」には今は休憩所が建てられ、分水嶺からの水が流れています。
この辺り、菊池寛の小説『恩讐の彼方に』の舞台で、主人公は夫婦で「峠の茶屋」を営んでいるのですが、裏稼業で人斬り強盗をしているというすごい設定でした。
この峠の茶屋跡からさらに下ると、葬沢です。
「葬沢ほうむりさわ」、すごい名前ですが、説明板には「1582年、木曽義昌が武田勝頼の兵2000を迎撃し、勝利を収めた古戦場跡。武田方の死者約500人が谷を埋めたことからこの名がついた」とありました。
16C、地元の木曽氏*2と隣国の武田氏は複数回戦い、この鳥居峠は美濃と信濃の国境にあるため、中世から何度も戦闘の場となったのだそうです。
1582年2月の戦い(甲州征伐)では、織田軍の加勢もあり、武田軍が敗れます。*3
そうした攻防の舞台にしては、なかなかの山中。「ほんとにこんなところで戦ったの?」と思いながら、さらに山道を下ります。
③「奈良井宿」
さて、坂を降りきるとそこには「奈良井宿」が広がっており、壮観です。昔の人も宿場を目にしてほっとしたに違いありません。
宿場入り口には、鎮しずめ神社という朱塗りの綺麗な神社が見え、出迎えてくれる感も。
④『初恋』に出てくる「花櫛」とは
この「中村邸」は元櫛問屋で、かっては塗櫛の商いをしていたのだとか。櫛のコレクションや櫛の乾燥に使った櫛専用の蔵などが面白いです。
こんな宝飾品みたいな櫛を貰ったら、さぞ心ときめいたことでしょう。
時代劇で櫛やかんざしをもらって喜ぶ女性の姿を見ることがありますが、その気持ちが分かるような気がしました。*4
実物は無かったのですが、花櫛はなぐしの写真を見ることができました。*5
島崎藤村の「初恋」にある花櫛ってこれか!
「前にさしたる花櫛の 花ある君と思ひけり」の一節ですが、花櫛の意味はよく分らないものの「花のようにきれいな櫛」のニュアンスくらいかと思っていました。
これは可愛い。つまみ細工のお花がついていて、少し揺れるしかけのよう。
なるほど。この花飾りに負けないくらいの、本当に年若い女の子がつけるものということが分かり、何だかすっきりしとました。
また、この中村邸の「櫛の蔵」からみえる景色も素晴らしいもので、山が目の前にドーンと。
これがお庭の借景というのもすごい(おすすめは紅葉の季節とのこと)。
「中村邸」
開館時間:9時-17時(4月-11月)、9時-16時(12月-3月)
休館日:無休(4月-11月)、月曜(12月-3月)
入館料:300円
花櫛にたいへん感動したところで、「奈良井宿」を後にします。少し先の漆器の町・木曽平沢まで足を伸ばして、「中山道」の旅もおしまいです。
【営業時間】9-16時 【定休日】月
最後に
ということで、中山道の鳥居峠越などを中心に紹介しました。奈良井宿は例年、外国人観光客が多いのですが、今年はいつもより静かに紅葉を楽しめそうです。
山家らしい素朴な食事、歴史、町並み。何より美しい山と川。何度も訪れたくなる魅力的な場所ということで、『中山道・奈良井宿と難所・鳥居峠』の紹介でした!以上です。ではまた!