【素朴な疑問】メイクの白粉・パウダーでじん肺(塵肺)にはならないのだろうか?
先日、岡崎の石製品を調べる中で、「塵肺じんぱい」が石工さんの職業病であって、かってのその異様な短命さに愕然としました。そして、それと同時にずっと思っていた疑問、「メイクの時、白粉をぱたぱたとはたくのは、実は肺に悪いんじゃないか?」という疑問について、書いてみたいと思います。
Hands off my tags! Michael GaidaによるPixabayからの画像
早ばやと書きますが、「毎日、何時間も無防備で、石紛を吸っていた昔の石工さんと違い、それ位ではならない。」という意見が大方です。*1
白粉なんて、微量だから大丈夫というわけで、そうした実験・検証・報告も見当たりませんでした。
しかし、「化粧で、じん肺や肺がんになるのなら、もうみんななってるわ!」と言われて、「そっかぁ。じゃあ、毎日吸い込んでも大丈夫だね!」と、思えない自分もいます。
体に悪い「粉じん」と、化粧品のなかみ
もっとも有名な肺に悪影響を及ぼす「粉じん」といえば、建材などに使われたアスベスト(=石綿)で、解体する際に飛散するアスベストの吸いこみが肺を傷つけ、最悪、肺がん化することはよく知られています。
このアスベスト*2や石材加工時の「粉じん」*3など、「じん肺」の原因になる多くは無機物のイメージが強いのですが*4 、化粧品には、「ミネラルパウダー」「ミネラルファンデ」のように、わざわざミネラル入りを前面に出すものがあります。
個人的には、どっちかというとマイナスイメージなのですが、よく思えるのかな?(植物由来とかの方が安心できるイメージ)。
こうした化粧品に入っている内容物をみていくと、マイカ(雲母)、シリカ(2酸化ケイ素)、タルク(滑石)、セリサイト(絹雲母)、カオリン(ケイ酸塩鉱物)、酸化チタン、酸化亜鉛、ベンガラ(酸化鉄赤)‥と、鉱物がしらないところでたくさん入っていることが分かります。
an_photosによるPixabayからの画像
また、「細かな微粒子が、肌をキラキラ・サラサラ・スベスベに仕上げます」など、粒子の細かさを謳うのも、肺のことを考えると、(あれ、吸い込みやすいってことだよね?)、などと考えてしまいます。
粉じん(微粒子)のサイズ
「粉じん」のサイズが大きければ*5、鼻などでカットされますが、5μmマイクロメートル以下の「粉じん」は、気管・気管支・肺に到達します(1μm=0.001mm)。
それでも、 呼気によって体外に出されたり、細胞(マクロファージ)が分解・消化してくれるという体の働きがありますが、処理能力を超えるものは排除しきれず、永遠に肺に残り続けます。
マウスのマクロファージ(捕食のために、体を手のように伸ばしている)
Obliさん , CC 表示-継承 2.0, Link
化粧品に含まれる微粒子のサイズは、いちいち明記されているわけではないのですが、拾っていくと、5μm以下のものがみられ、やはり細かいんだなぁ、と考えさせられます。
メイクのパウダーだけではない
メイク用品に限らず、身の回りには「粉じん」を出しているものがたくさんあります。
例えば、黒板のチョーク、グランドに引く白線、砂ぼこり、黄砂にPM2.5、などです。
土砂などを運ぶダンプの巻き起こす「粉じん」に対して、沿線の周辺住民が健康被害を訴えて、問題になったこともありました。
ivabalkによるPixabayからの画像
また、春に飛ぶ「黄砂」ですが、日本のような遠くまで飛んでくるものは、軽くて粒子も細かいものです(4μm)。「PM2.5」は、空を飛ぶさらに小さな粒子(2.5μm以下。様々な無機元素を含む。)で気管支・肺に取り込みやすく、こちらもよく話題になっています。
グランドなどで、「砂ぼこり」が立つのを目にすることがありますが、モンゴルでは砂塵による家畜の肺障害が報告されていて*6、家畜にあるということは人間も同様で、砂漠化している地域には高いリスクがあるのだろうと想像されます。
エジプトの砂嵐の衛星画像 WikiImagesによるPixabayからの画像
最後に
「メイクのパウダーだけでは、じん肺にならない」、これは正しいのかもしれませんが、それ以外にも結局、様々な「粉じん」を吸っていること。
また、「粉じん」以外の、車・工場からの排ガス・排気、家庭の掃除機からの排気、ハウスダスト、たばこの副流煙など、各種肺が吸う総量を考えると、「変なものは、できる限り吸わないにこしたことはない」と、考えるのがいいような気がします。
(ダメージを与えた肺に異変が現れるのは、かなり先の話ですが、呼吸が苦しくて話せない、胸が痛い、咳・痰がからむ、という症状がまとわりついては、残りの余生を楽しむことが不可能になってしまいます。)
最初の話に戻りますが、メイクの時にはそっと静かにつけて、吸い込まないようにするのが良いのかなと、個人的には思っています。
肺は一度悪くすると治ることのない不可逆の臓器であることを考えて、大切にするべきだろうと思いつつ、『メイクの白粉・パウダーでじん肺にはならないのだろうか?』でした!以上です、ではまた!
【参考資料】
◯『身の周りの粉粒体』 化粧品に入っているものがよく分かるサイト
◯「働くもののいのちと健康を守る全国センター」さんのサイト