物欲子(ぶつよくこ)のブログ

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【疑問】中国の奇石・怪石・珍しい石とはどんな石なのか?(あの「花石綱」で集めた石も知りたい!)

 

中国にも日本と同じく、石を鑑賞する文化があります。

日本でも趣ある石を庭に置いたり、室内に飾ったりしますが、こうした「水石すいせき」はもともとは中国伝来。

枯淡な日本の石と違い、中国は国土が広いせいか好みのせいか、ぐにゃぐにゃしたもの変ったデザインが多いようだ、と何となく思っていました。

ということで、今回は中国の石文化を紹介した『奇石』という本から、中国の個性的な石を実際に拾ってみたいと思います!

また、中国史で有名な皇帝の石集め「花石綱かせきこう」ですが、

いったい全体どんな石を集めていたのか?興味があったので、これについても少しだけ載せました。

 

①中国の「奇石」をみてみよう!

 

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中国盆景の世界③『奇石』農文協2000
編・丸島秀夫・胡文驊

上の本では、カラー写真多数で中国の「奇石」*1をたくさん紹介しています。

さっそく見ていきましょう!

まず、目にとまったのは中国の山に見立てた石

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『奇石』13Pより

単なる山景か、神仙の棲む山を表現しているのか、詳しい説明がなく分かりませんが、

こうした遠山石(とおやまいし)も日本に比べると華やかで中国らしさを感じます。

ちなみに下は日本のもので、すごくシンプルで、渋いものも多い印象。

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松浦有成『水石入門マニュアル』(近代出版 H15)24Pより

さらにみていきます。

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『奇石』59Pより

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『奇石』101P 英徳石(広東産)

うーんなんだこれ?というような不思議なかたちをしています。

中国の水石には石に名前をつけるという伝統があり、これは「鯉魚、龍門に跳る」という石名から、鯉の滝登りの見立てであることが分かります。

また、今までみてきた石、(石の大きさよりは)ボリューム感があったのではないか?と思うのですが、

これは頭を大きくし下を細くするという中国の水石の手法で、大きく魅せるようになっています。

さて、下の右側はいったいどうやってこうなんできた?とびっくりするような不思議な石で、今回1番気になったもの。ものは砂岩(台湾産)

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『奇石』99Pより
石名は「親昵」(人か神の見立てか?)

というように、石を自然物(山や川)に見立てる、神仏・動物に見立てるほか、

かわったところで「文字石」というものがあり、これは石に文字が書かれているように見えるものです。

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『奇石』126Pより

上の写真の石にくっきり浮かんだ「」という字、書いたんじゃないのー?と思えるほどなのですが、広い中国ならこんな石もあるのかな?

このほか、中国では有名な「雨花石うかせき」という美しい名前のメノウがあるのですが、

色彩のカラフルさ・美しさから、古来たいへん愛好されたようで、『奇石』の本でも大きくページがさかれていました。*2

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『奇石』134Pより

上の雨花石は、浮かぶ模様に風景を見、下の雨花石には「造化に遺巧なく丹青すべて真を失う」という名前がついているので、石に天地の真理を見ているようです。

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『奇石』136Pより

さて、私も雨花石を持っているので写真と見比べたのですが、どうも雨花石にはものすごく多種多様な色柄が存在するらしい、ということに内心驚いています。

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雨の波紋のような雨花石(3cm×2.5cmほど)

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きれいなお土産品の雨花石

ということで、『奇石』の中でとくに目にとまったものをみてきましたが、広い中国大陸には未知なるものがまだまだあり、これらはほんの一端なのだろうと感じています。

 

花石綱の石

 

さて悪名高い「花石綱」についてですが、

集めた石っていったいどんな石?と興味を持っていました。

花石綱は、文人皇帝・徽宗きそう(北宋・1082-1135)が都に山を造り*3、そこに珍しい石や草花樹木を集めたというもので、

強引に買い上げたり・強奪したり、運ぶ途中に民家や橋をぶっ壊したり、労働力として使役したりで、民衆の怒りを買ったという出来事です。

本の中で、この山(艮嶽こんがく)に多く集められたのが「太湖石たいこせき」であったということも分かりました。*4

下の写真の右上が花石綱で運んだ太湖石で、驚いたことに「瑞雲峰」という立派な名前がついています。*5

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『奇石』54Pより

wikiにも運ばれた石の写真が載せられていました。

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豫園にある石 Gisling , CC 表示-継承 3.0, Link

しっかし、なんかぐにゃぐにゃした複雑怪奇な石です!

この「太湖石」の何が良かったのかというと、このみための複雑さなわけですが、

このぐにゃぐにゃの理屈は簡単で、石自体は青白い石灰岩。水に溶けやすい石灰岩が、水に浸食されて穴が開いてるわけです秋吉台のカルストと同じ)

この「石に穴が開いて向こうが見える」というのが(中国の)よい石のポイントで、さらに「まるで雲のようにみえる」というのも同じく高評価のポイント。

というのは、中国の宗教である道教では「」というものを大事にしますが、

その気の見えるかたちが「」で、霊山に発生する雲、仙人が乗る雲瑞雲などという雲の持つおめでたいイメージ(開運・吉祥など)をこの石にみているのです。

さきほどの「瑞雲峰」のように雲に見立てられた太湖石は多く、「雲の字がはいった石」を今でも多く確認することができます。*6

 

最後に

 

ということで、「中国って国土も広いしとんでもない石があるんじゃないの?」という興味から、探してみたわけですが、結果としてその一端を知ることができました。

今回、中国で有名な2つの石「雨花石」「太湖石」について少し詳しく探せたのも良かった(なにしろネットで中国の石で調べると、墓石ばっかりでてくる!)

というわけで、(まだまだ面白いものがありそうだコレ)と思いながら、以上、『中国の奇石・怪石・珍しい石とはどんな石なのか?』でした!ではまた!

*1:「怪石」「異石」とも呼ばれ、本来は稀にしか見られない珍しい石の意。

*2:産地は南京近郊の川。かって雨花台と呼ばれる場所で採れたことから。

*3:周囲約5.5km。高さ約140mの山。

*4:蘇州・太湖付近で採れる石。

*5:中には「盤固侯」という爵位まで授けられた石もあったとか。

*6:『奇石』147p