物欲子(ぶつよくこ)のブログ

物欲子(ぶつよくこ)のブログ

(おもに)物欲ぶつよくの記

心が戦慄するような『ノンフィクション』を読みたい!【①事件・事故編】『日本の黒い霧』『常紋トンネル』『アグルーカの行方』『そして謎は残った 伝説の探検家マロリー発見記』『36歌仙絵巻の流転』『サンダカン8番娼館』

タイトル通り、「ノンフィクション」が好きです。このジャンル、そんなに作品数が多いとは思わないのですが、毎年、良書探しに苦労します。今回はその「ノンフィクション本」の中でも魂がふるえた本を紹介したいと思います。

ノンフィクション』の捉え方

 

(個人的な定義は)「実際にあったこと」です。そのため、事件・事故戦記物自伝・体験記歴史の本など、結構幅広くとらえています。

 

『日本の黒い霧』松本清張(S60)

 

GHQ占領下の昭和20年代に起こった事件群がテーマ。なかでも、初代国鉄総裁・下山しもやまが轢断遺体となって発見された「下山事件」の話が興味深い。

下山総裁の事件前の足どりなど臨場感に、ゾクゾクとさせられます。

自殺か他殺か?アメリカの謀略はあったのか?読後、轢断地点の常磐線・北千住~綾瀬間を通ると、今でもこの事件のことが頭をよぎるほど。

新装版 日本の黒い霧 上下巻 セット

新装版 日本の黒い霧 上下巻 セット

  • メディア: セット買い
 

②『常紋トンネル』小池喜孝(1977)

 

北海道の鉄道建設工事に従事させられた「タコ部屋労働者」の記録多くの証言あり)。

大正時代、内地から甘い話でだまして連れてこられた人も多く、監禁下の長時間労働で亡くなる人が続出した。労働が出来なくなった者を生き埋めにすることもあったという。

タイトルの「常紋じょうもんトンネル」は、湧別ゆうべつ線最大の難工事で100人以上が亡くなりました

昭和45年、トンネルの壁の裏から立ったままの人骨が発見され、当時の工事の様子が改めて呼び起こされ、話題となった。 

読後、「言葉にならない」衝撃を受け、ずっと心にある1冊。

③『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』角幡唯介(初版2012)

 

1845年、北西航路発見のため北極に派遣されたフランクリン隊の話。

北極海で氷に船が閉じ込められ、自力で脱出する事態に陥った隊。脱出行の中、全員が死亡する。

166年後、探検家である著者が、フランクリン隊の脱出ルートを徒歩で辿り隊の生き残りを率いた最後の生存者(?)「アグルーカと呼ばれた男を追う話

この事件に興味があったとしても、北極に同じルートを辿りには行けないので、探検家ってすごいなぁ、と心から感心した。著者と共にまるで北極を歩いている様な気持ちを味わうことができる。現場に行ってこその「体感」の記録。

④『そして謎は残った 伝説の探検家マロリー発見記』(1999)

 

エベレスト初登頂は、ヒラリーテンジン・ノルゲイですが(1953年)、1923年の時点でエベレスト初登頂を目指し、行方不明となったジョージ・マロリーの話。

エベレスト山頂へアタックをする姿が、彼の最後の目撃となった。

登頂前に遭難したのか?エベレスト初登頂後に遭難したのか?が最大の謎で、もし遺体が発見されれば謎がとけるかもしれない、

ということで、過去何回か捜索が行われた。

そして、1999年、捜索隊がついに遺体を発見する。果して、初登頂の謎は解けるのか?

ヒラリー登頂の30年も前、貧弱な装備で果敢に挑戦していったマロリーの山にかける思いが感じられて切なくなる。

「旅は素晴らしく、同時に残酷なものである」という何かの一節を思い出す。

⑤『36歌仙絵巻の流転』高嶋光雪・井上隆史(NHK取材班)1984

 

 大正時代に切断された絵巻『佐竹本三十六歌仙絵巻』13cの流転を追った1冊。

 もし切断されていなかったら、現在国宝だっただろう絵巻」。この切断事件がきっかけとなり、「国宝保存法」(s4年)、「重要美術品等の法律」(s8年)が制定された。

37枚に切断された「絵巻」は、財界人の手から手へ、流転を3度4度と繰り返し、現在は美術館にあるものも多い。また何点かは重文指定を拒み、世に出ることはない。

有名な財界人、有名企業の名前が綺羅星の様に現れ、驚かされる。

取材が行われた1984年から、既に36年。現在も流転を続ける「歌仙絵」もあるのかもしれない。「絵巻物」として存在して欲しかったけれど、せめて所有者に愛されていますようにと願うのみ。

f:id:butuyokuko:20200928051314j:plain

三十六歌仙絵巻の流転』

⑥『サンダカン8番娼館』山崎朋子(1972)

 

昭和43年、天草で偶然見かけた老からゆき*1おさきさん」(当時70過ぎ)。

その「おさきさん」の家に3週間同居させてもらい、彼女の半生を聞く著者。

ムカデが這いまわる腐った畳の家に住む「おさきさん」が、著者を信用し、ボルネオに売られた話・娼館での話をしてくれる。

2人の間には心の通い合う時間がきっとあったのだろう。貧乏で売られ、辛い娼妓生活。帰国をしても差別の中で、優しく高潔だった「おさきさん」は一筋の光のように思える。今手元にないけれど、これを機にもう一回読み返してみようと思う。

新装版 サンダカン八番娼館 (文春文庫)

新装版 サンダカン八番娼館 (文春文庫)

  • 作者:山崎 朋子
  • 発売日: 2008/01/10
  • メディア: 文庫
 

最後に

 

‥ということで、心に残った「ノンフィクション」6冊を上げました。

「ノンフィクション」の良さは、現実に起こった人間どうしの問題や社会のあり方や謎に心が緊迫し、読後に考えさせられることなのかな、と思います。

真実(または真実に近いこと)に、心が震えること間違いなしの良作揃いなので、機会があれば、ぜひ読んでもらえたら、と思いつつ、

以上、『心が戦慄するようなノンフィクションを読みたい!』【①事件・事故編】でした!ではまた!

butuyokuko.hatenablog.com

butuyokuko.hatenablog.com

*1:「からゆき(唐行)」さん 19C後半、東アジア・東南アジアに渡り、娼婦として働いた女性。島原や天草の出身者が多かった。