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【菟足うたり神社】生けにえの伝説と「風かざ祭り」について(愛知県豊川市小坂井町)

豊川市にある菟足神社という古い神社に行ってきました。現在はいたって普通の神社ですが、神社にまつわる生けにえの伝説や祭礼「風祭り」、そのほか面白いポイント(境内はうさぎ尽くしだったり)について書いていきたいと思います。

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南から

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本殿 Yanajin33 - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link

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賽銭箱のうさぎ紋

①菟足神社の面白いポイント

 

 いくつもポイントがあります。

①古い歴史。675年、秦石勝(はたのいわかつ・渡来系氏族)によってこの場所に祀られた。*1

生けにえ伝説があり、今も「風祭り」になごりがある。

③風祭りで売られる「風車のおもちゃ」が古風で面白い。

④兎にちなみ、境内にはうさぎモチーフがたくさん。

⑤『徐福じょふく伝説』がある。

旧東海道ぞいにある。

⑦このふきんは貝塚や遺跡が多く、古代から人が居住する場所だった。

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風祭りの日に売られる郷土玩具の風車      出典:「三河の郷土玩具

②菟足神社の立地

 

上記のように見所ポイントがたくさんある菟足神社ですが、立地についてもう少しみてみます。

菟足神社のあるあたりは豊川とよかわの河口で、昔は社の前を川が流れていました。*2 穏やかな内海に面し、陸路も通り、気候も温暖で恵まれたこの場所は、古代から人が居住する場所でした。

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周辺には貝塚の遺跡が多く残される

そして、豊川が流れる川境という立地から、三河遠江の国境となり、その地名「小坂井こざかい」にもその名残りをみることができます。また旧東海道は、この神社の前を通っており、道の分岐(豊川稲荷方面、姫街道方面)も近くにあったことから、交通の要衝として栄えた土地でした。

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神社と横の国道1号=東海道(橋の下を通っている)

③菟足神社の伝説

 

菟足神社には2つの伝説がありますが、1つ目は動物のいけにえの話。2つ目が人間のいけにの話になります。

①『今昔物語*3

 三河国司・大江定基が、菟足神社で行われる「風祭」のようすを見てショックを受け、「ただちにこの国を去ろうと思った」という話。

当時の風祭は、生けにえの猪を生きたまま切り裂いていたという(味がおちないようにか?)。それを見た定基はツラくなり、出家を決意する一因となったという話。平安時代には、このように猪を捧げていたようですが、江戸時代になると、現在と同じくスズメ12羽に変化しています。

お供えが変わったとはいえ、平安時代から続くこの祭りは、毎年4月の3日間行われます。

初日、近くの神社へ出向き、境内で矢を2本放つ「雀射初すずめいそめ神事」。2日目の「雀射収いおさめ神事」と続き、神事もたいへん珍しいもの。*4

祭り最終日の「雀献供すずめけんく」では、宮司雀12 羽と白酒と醴(あまざけ)を神様にお供えするそうで、これは他の人間が見ることは許されない神事だとか(今でも、本物の雀をお供えするのかを聞いてみたい)。

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ぱちょぴ(投稿者)撮影 , CC 表示-継承 3.0, Link

 

②『子だが橋の伝説

 風祭前日の早朝、境にある小橋を1番最初に通る若い女性をとらえて生けにえにする習わしがあったという伝説。

ある年、生けにえ調達役の男性が若い女性を捕らえると、それは里帰りしてきた自分の娘であったという(自分の子供を間違えるものだろうか?とは思うが)。しかたなく、我が子を菟足神社の生けにえにさしだし、それ以後、その橋を「(自分の)子だが橋」と呼ぶようになったという*5

菟足神社と『風祭』

住所:豊川市小坂井町宮脇2  ご祭神: 菟上足尼命うなかみすくねのみこと

神社の創始:675年? 

祭礼日:4月第2(金)、土日

風祭」は、荒れた海や風がしずまるよう祈念する祭り。海が近いことも関連している。

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神社で頂けるパンフ(境内でうさぎモチーフ探しができる)

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本殿にある大きなうさぎ神輿(ジロっ)

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鬼瓦にもうさぎ紋(赤丸)

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のぼりにもうさぎ紋がみえる。なんだかかわいい。

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神主さんの不在が多いため、御朱印はセルフ(置いてある書きおきを頂き、お金を納入)

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菟足神社のお守り(絵馬に風車の郷土玩具が描かれている)

最後に

 

‥というわけで、今は普通の神社にみえる菟足神社の歴史・伝説・立地についてみてきました。やはり興味をひかれるのは、昔話の人間の生けにえが本当にあったどうかですが、個人的にはどちらかというと否定的です(仮にあったとしても極めて稀なことだったのでは?)

動物の生けにえについては、遺跡から出土する牛馬の骨や、諏訪大社(長野)の「御頭おんとう祭」など*6 でみることができます。

しかし、人間については生けにえがあったことを示す確かな物証がない(遺骨が出てもいけにえかどうかまで分からない)。伝説・伝承の域を出ないのです。

結局のところ、確かな物が出ない限り、本当のことはもう分からないのかもしれないなと思いつつ‥、以上、『菟足神社 生けにえの伝説と風祭りについてでした!ではまた!

*1:以前は少し離れた浜にあったという。

*2:神社のある豊川市、隣の豊橋市は、豊川が造った河岸段丘に囲まれた土地である。

*3:巻19。「参河守大江定基出家語第二」。

*4:かっては生きた雀を射ていたというが、それが「鳥形」に変り、今は単に空を射る。

*5:「子だが橋碑」や『小坂井町の史跡と文化財』( 小坂井町教育委員会)に書かれる内容ですが、もとになった話はどこからの出典なのか、今回は分かりませんでした。

*6:鹿の頭をお供えする。