『石工団地神社』のご朱印【総石造りの本殿】【総石造りのトイレ】(石都・愛知県岡崎市の石製品)
先日、愛知県の伝統工芸品のパンフを読んでいて、岡崎市の石工団地という場所に「石工団地神社」という神社があり、ご朱印を頂くことができる、という情報を目にしました。
それは珍しい!ということで、岡崎名産の花崗岩(=みかげ石)をみる目的もかねて、先月、「石工団地」に出かけました。
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①「石工団地」と「石工団地神社」
JR西岡崎駅の南、歩いて5分のところに「石工団地」はあります。*1
白みが多くてきれいな、「ザ・みかげ石」という石です。
さらにまっすぐに進むと、「石工団地協同組合」の建物と神社がほどなく見つかりました。
共同組合の南側の敷地を利用して建てられています。中に入って、参拝させていただきます。
この神社、全部、岡崎の花崗岩で作られていて、縁の唐獅子・牡丹の彫刻なども、丹精こめた逸品のようです。立派ですね。
石の由緒書を読むと、ご祭神は「建真利根命たけまりねのみこと」*2 と亡くなった組合員の方々で、昭和49年に創建されたということが分かりました。
本気度伝わる本殿から目を横に移すと、「絶縁祈願」と書かれ、石の絵馬が破壊されています。
石好きとしては、せっかく作った絵馬が割られてはせつないのですが‥、結構割られていました。
上のトイレは、組合の創立45周年記念に500万円をかけて作られたものということで、また、トイレの右横に描かれたキャラは、「石丸団吉くん」という一般公募から選ばれたキャラクターだということも分かりました。
さて、御朱印はというと、「石工団地協同組合」さんの玄関口に設置されていました。
誰でも自由に押印していいよ、というスタイルで、気楽です(共同組合さんがお休みの日、夜も押印可)。
「共同組合」さんの中には、物販もあると聞いていたので、ちょっと覗かせてもらいました。
標本として石が欲しいけど、コースターは結構もっているしなぁ‥と悩みます。
共同組合の事務所の方が気さくな方で、お話していると、事務所の中にある標本を見せて頂けました。
この上から3番目のプレートが「牛岩青石うしいわあおいし」という名前の、日本でもトップクラスの岡崎の花崗岩です。
その特徴は、密で固くて丈夫。磨くとツヤツヤと光沢を放ち、少し青味がある、というものですが、青味というよりグレーに思えるものです。
上の見本、ちょうどいいことに、上から2つ目に、日本で最高級といわれる花崗岩「庵治石あじいし」(香川)の標本を置いています。
どちらもすごい密で、地肌も似ています。もうそっくり!*3
ここの事務所の方々には本当に親切にして頂き、大感謝でした。そうした親切に舞い上がって、いささか挙動不審になってしまい、家に帰ってきてから反省したのですが‥。
さて、上の石は、「本来は商品だったけど、角が欠けてダメだから」、と頂きました(嬉しい!)。
「宇寿石・薄石うすいし」と言うのだそうで、色が白く、「牛岩青石」とは明確に区別がつきます。この「宇寿石」の方が、岡崎を代表する花崗岩なのだそうです。
ちなみにこの頂いた「宇寿石」、よく見ると青みがあることにきがつきました。
左が「ブルーパール」(ノルウェー)。右が「ニューインペリアルレッド」(インド)。
頂いた時は、花崗岩かどうかも分からなかったのですが、花崗岩でした。
「ブルーパール」は、貝殻のようにきらきらと輝く美しい石ですが、これは内部に含まれた貝の化石によるのだとか。
また、「ニューインペ」は、鉄由来の赤い花崗岩で、日本には赤い花崗岩自体産出しないのだそうですが、そうしたことも面白いし、この石、大変古くて、約25億年位前のものなのだとか(日本の花崗岩の多くは数千万年クラスと若手?)。
さて、石とご朱印を頂いた後、石工団地内を少し散策しました。
団地内は、業者さんが何十軒と終結していて、どこの通りを見ても、加工・未加工の石製品が置いてありました。
お店というより、加工場という様子のところも多く、小さな石グッズが売ってないか探したのですが、やはりメインの商品は、墓石、石灯篭、仏様などの彫刻という感じでした。
②「石工団地」の秘密?
この「石工団地」、団地という名前も?だし、整然と区画されているのも不思議な気がしていました。
そのわけは、石工業者さん達が移転してきて、新たに造成された場所ということにあります(昭和39年~昭和42年)。
移転の理由は、戦後、業者さんが増えて、岡崎市内が手狭になったこと。製造の際に出る音の問題などで、今あるこの場所は、岡崎郊外の広くて静かな場所となっています。
【石工団地内の観光についての個人的な感想】
団地の中の通りを歩いて、雰囲気をみさせてもらう、ような感じ。
【営業時間】業者さん・お店によって違うと思いますが、お昼の休憩時間は避けた方がよさそう。
【定休日】土日祝は休まれているところも多いかも。
最後に
今回、石屋さんの町を散策し、また調べるうち、ずっとモヤモヤしていた個人的な疑問が、少し解消しました。
それは、「お墓の石はたいへん立派だけど、川原とかのそのへんの石ではいけないのか?」「墓石の石の長所の説明に、固くて丈夫・ツヤがある、とあるけれど、それってそんなに重要?」、というものでした。
結論として、お店やお墓に並ぶ墓石はやはりいい物で、傷があるものは売り物にならないし、また、傷がない素材自体が少ない、ということが分かってきました(切りだし段階での廃棄率は相当)。
もし傷があれば、そこから水が入り、紫外線を浴び、乾燥・雨・乾燥・雨‥を繰り返し、最悪、割れます。雨による劣化を避けるためには、石自体が高密度で水を通させないこと。そして、墓石は銘を入れるものなので、何百年後も判読可能にしようと思ったら、硬度の高い、堅い石が必要だ、と。
何気に見ている墓石ですが、石工業者さんの審美眼と技術の賜物であることには、全然気がついていませんでした。業者さんの苦労や大変さは、まるで私たちには伝わっていない?
店頭にダメな墓石を置いたり、石の廃棄率なんか提示してくれたら‥、とふと思ったのですが、買う時は誰しも急いでたり、気持ちが通常ではなかったり、コレ、深く考えずに買うものなのか‥、だから、よく知らないのか、と思った今回でした。
‥ということで、『石工団地神社のご朱印、石都・愛知県岡崎市の石製品』でした!以上です、ではまた!
【参考資料】
◯『岡崎の石製品』
◯松井貞雄『岡崎石製品工業地域の伝統と変容』1987
◯石材のことが日本一わかるサイト「いしマガ」
現在、岡崎の石工品出荷額も石工業者さんも右肩下がりとなっています。もともと、墓石より、石灯篭が有名だった岡崎の石製品ですが、現在は墓石が多くを占め、その墓石も安い輸入石材に浸食されていたり、墓終いなど墓離れが進む社会状況など、上記を読むと、色々な問題が分かります。