今年、刊行されたばかりの『神秘のユニコーン辞典』(2021年7月刊)という本があります。
まるまる1冊ユニコーンの本ということも珍しく、外装のキラキラさ、美本っぷりに思わず手に取り、買ってきました。今回はこの本の内容について書いています。
①美本『神秘のユニコーン辞典』
フランスで出版されたこの本は総ページ185p、フルカラーでさし絵もふんだんに挿れられ、表紙にもプックリと厚みをもたせたリッチな感じがするものです。
ユニコーンについてまるまる1冊書いたという本はあまりなくて珍しいです。
目次を見ただけでは(特に④⑤⑥)、「何だそりゃ」ですが、本にはユニコーン伝説の起源から、現代のユニコーン事情までが書かれています。
②ユニコーンの起源
本は、ユニコーンの起源から始まります。
もともと一角獣はアジアにいると思われた生き物でした。
ヨーロッパ側の最古の記述(BC5)では、そうした生き物がインドにいると記述されています。*1
しかし、読んでいるとどの伝承も曖昧模糊として何だか霧の向こうの話を聞いてるよう。
おなじみの外見も随分と時間をかけて、今の姿に落ち着いたことも分かりました。
最初の頃は、その姿はロバとも言われ、体は馬で頭は鹿とも言われ、ヤギ+羊+小鹿などとも書かれています。ルネサンス時代には馬に近づき、おなじみの螺旋型の角を持つようになったのもこの頃なのだとか。
体色も白とか茶とか黄土とか青とかまちまちだったものが時代が下るにつれて白色化、イメージが統一されていきます。
幻想動物の1つであったユニコーンが、ヨーロッパで永く伝承されたのは「聖書」にあったということもこの本から分かりました。
聖書をギリシャ語に翻訳する際*2、水牛・鹿などの生物を一角獣と誤訳した結果、聖書にユニコーンの記述が載ることとなります。
その後、「聖書にあるから」とユニコーンは長く信じられることとなり、そして、その姿・特性は変容をしはじめます。
③ユニコーンの特性・特徴
①角の薬効
シンボルの角には薬効がある(解毒など)とされ、誰もがこぞって欲しがったのだとか。
②気性は荒いが純粋で清らか、優しさの象徴とされる。
「若い清純な処女に誘われてユニコーンが現れる」と伝承され、これが捕獲する唯一の方法といわれた。
この「若い処女とユニコーン」というロマンテックなモチーフは好まれて、ユニコーン単体でも19C以降の絵画・小説・映画・アニメ・ゲームに用いられだします。
有名な6枚連作のタペストリー「貴婦人と一角獣」の解説にもページがさかれています。
その他、国章のデザインとしてのユニコーンや現代のユニコーン企業、MLP(マイリトルポニー)などについても解説があります。
最後に
というわけで、美麗なユニコーン本から読む「ユニコーンの歴史」でした。
ユニコーン自体は、うわさの1人歩きというか、正体の無い蜃気楼のような感じ。その実体の伴わないものに、人間が憧れや創作・イメージで色づけをしたものが今の美しいユニコーンという印象です。
この本に何か空虚を感じても、それは仕方がないことなのかもしれません。
ちょっと正直にいうと、「ユニコーンの絵がきれい」以外の感想は特になかったり。
ということで、以上、『神秘のユニコーン辞典』でした。ではまた!
グラフィック社の出版している一連の小さな美本はどれも気になるものばかり。