『面白い名言を集めました!』【面白い文章・発言・名言・短歌・俳句などを抜き出してみる】【過去の読書の記録から】
昔のノート・日記・記録を大事に取っている方はいるでしょうか?私は20年前からのノートをとっていて、ごくたまに見返すことがあります。
今回はそのノートから、心に残った文章・名言・発言、短歌・俳句などを拾いました。
20年という月日を経てもなお、ドキッとしたり、心をうつほどで、私にとってその価値はホンモノだったわけですが‥。
興味のあるところだけ読んでもらえたら、嬉しいです。
ノート自体、かなりの内容量なのですが、ブログが暗くならないように、今回は「何だそれは?」という、少し笑えるものを書き出しました。
①発言
「とことん一緒に墜ちてみたい。田舎の温泉宿に恋の逃避行をして住みついて、裕木奈江が仲居になって自分が下足番やれたらいい。」
いきなりの衝撃的な発言に驚きますが、おーい、どれだけ好きなんだー!裕木奈江が!
当時の裕木奈江さん(女優)は、雨にも溶けてしまいそうな儚げな美人。男性からとても人気がありました。
一方の亀和田武さんは、TVのキャスターなどされていて知的なイメージ、かつどこか可愛げのあるおじさまでした。
雪の降る、日本海側とかの人の絶えた温泉宿で、幸薄そうな美人と「いっしょに死にたい」「あなたさえいればなにも要らない」などの妄想は、確かに極上の妄想であるかもしれません。
②名言?
「虐待されようが、強奪されようが、忘れてしまえばどうということもない」(孔子)
えぇ、虐待や強奪を忘れますかぁ?まるで加害者側の意見みたいだけど‥。いったいどーいう発言なんでしょ?*1
(吉原で騒ぐ瓢客たちに対し、)「ウフフ‥。他愛のない事を申しおるな。いっそわしもあの者位馬鹿に生んで貰うと幸せじゃったな」(と悲し気に微笑)
引用:『旗本退屈男』のセリフ(『図説 時代小説のヒーローたち』)
イケメン直参旗本で剣の達人の主人公サオトメモンドノスケ。何の不自由もなさそうだけど、退屈でしょうがない。
よなよな江戸市中を徘徊したり、悪人を退治したり。退治したと思うと、今度は突然、厭世的に自嘲したり。複雑なまるでカメレオンのような性格は、どっちかというと現代人そのものであるのですが。
「うんうん死ぬまで押すのです。それだけです。」
この手紙の中の「あせってはいけません。頭を悪くしてはいけません。根気ずくでお出でなさい」「牛は超然として押していくのです」「人間を押すのです」という語りかけは、漱石の優しさをしみじみと感じる金言。
この手紙の4ケ月後、漱石は亡くなった(49歳)。
「ナイスバディよりもナイスマネーだ!金だよ金、金こそがすべてだ」
「幸福は金で買える」と言い切る両さんにはもはや清々しさすら感じるほど。そして「ナイスマネー」って表現が何ともおかしい(笑)、ナイスマネーって何だ?
「まあどっちかっていえば性格的に明るい方だからな、俺」
引用:寅さんのセリフ(『男はつらいよ』)
寅さんみたいにこんな風にサラッと言えたのなら‥。「貧しいねエ、君たちは」というおなじみのセリフもいい。
「一つ、某日外郭を破る。二つ、某日二の丸を破る。
三つ、某日本丸を破る。某日、弾正の首を取るべし。」
引用:織田信長の書状(『武将の一言』風巻絃一)
1575年、城攻め中の秀吉に信長が送った(という)書状。指示の端的さに感動する。指示が要領を得ない上司に見せたいくらいだ。(ただ、この文書もいまだに探せてないので、この後探そうと反省。)
③文学作品
「本なぞは殆ほとんど讀まないで、その無智なことと云ったら気高く見える程であった」 引用:『煙草』三島由紀夫
気高く見える無知(笑)! 三島由紀夫が学習院時代の友達を評したカ所。「無知でバカ」はいるにしても、「気高くみえる無知」には会ったことない(笑)
家柄のいい子ばかりだった昔の華族学校ならではの話で、もう「気高い無知」には出会えないのかもしれない。
主人公:「シベリアはどうしてこう寒いのかねぇ」
馬車の御者:「神様の思し召しでさぁ」
引用:『シベリアの旅』チェーホフ
「神様の思し召し」と言われては黙らざる得ない。この「シベリア」の下りを置きかえてみると、何でもいける。
「何でこんなにダメなんだろう?私」「神様の思し召しでさぁ」など、すんなりと得心がいく不思議。
「口では誓ったのだが、心は誓わなかったのだ」
劇中でのこのセリフ、ここだけ抜き出すと相当面白い。誓いこそしないものの、答えと心は別ってこと、あるでしょう?
④紀行文など
「この釈迦は野心が強く、賢明で邪悪な哲学的な土民である。」
引用:『日本巡察記』ヴァリニャーノ
ヴァリニャーノは、戦国時代に来日したイエズス会の司祭、巡察師で、日本についての記録を残した。
敬虔なキリスト教徒からすれば、釈迦はにっくき敵。よく書くはずはないのだが、相手について下げたかと思うと、上げて下げて上げてまた下げるという書きようが可笑しい。
下げながら、褒めを少しいれるやり方は、あざとく、人間性が窺える。
(法隆寺の救世観音について)「くすんだ黄金色の肉体を持った神々しい野人」「攪乱するような魔術者の面影」
引用:「大和古寺(こじ)風物詩」亀井勝一郎
素晴らしい表現力(!) 「神々しい野人」とか「タコ」とか、ホトケ様を評してなかなか出来ない。この文章だけ切り取ると、もしかしておちょっくってる?という疑念すら。
⑤短歌・俳句
「原稿が 百一枚となる途端 我は麦酒を 喇叭ラッパ飲みにす」
引用:吉野秀雄(歌人)
分かります!原稿じゃないけど、仕事が終わるやいなや私も以前はビールをプシュっ、て感じでした。この酒好きの先生の歌にたいへん共感してました。
他にも、「金を得て ビルを出でしが 四五分の後 するすると 飲屋に在りつ」なんて歌も。
詩なんてはっきりと分からなくたっていいと思うのです。なんかいいねってくらいのもので。歌の内容は分からないけれど、分かっているのはこの歌がすごく好きだということ。
この先生の歌も面白いものが多く、他には「阿波の旅に 今宵わが見る 裸ショー 小屋の中をも 秋の風吹く」なんてのも。
「教室の机によれば何となく怒鳴ってみたい心地するなり」
引用:菊池寛
何を怒鳴るのかな(笑)? 教室に居る菊池寛を想像して、自然と笑ってしまう。
「湯豆腐や いのちのはての うすあかり」
来し方行く末が去来する句。湯豆腐はすごく想像をさせる単語で、日本人にしか見えないだろうしみじみとした情景が浮かぶ。
⑥その他
「花は一点の醜悪も無い美麗でしかも趣味にとんだ生殖器で動物の醜い生殖器とは雲泥の差がある」 引用:牧野富太郎(植物学者)
花も動物も同じく自然が生んだものなのに、どうして美醜の差がついたのか?学者らしからぬ個人の好みサクレツな感想が面白い。
「画期的な切り札は激昂して騒ぎ立てること」
引用:出典不明
最悪だ(笑) まさにクレーマーになってしまう。もっといい方法ないかなぁ?
「私は、不適切なことを数限りなく質問してしまう」
引用:『反哲学的断章』ヴィトゲンシュタイン(オーストリアの哲学者)
分かります!変なこと言っちゃって、相手をけげんな顔にさせて自己嫌悪する時。エライ学者先生だってそうなんだから‥、と自分を慰めています。
「まず、人の名を忘れ、次に顔を忘れ、そしてチャックをあげるのを忘れるようになり、終いにはチャックを下げるのも忘れてしまう」
引用:『悪魔のセリフ(英文対訳 名言は力なり )』より
チャックを下げるのを忘れたら、‥それは大惨事。想像しては身がひきしまる迷言。
「1822年、不幸で病弱な男が時代の寵児になった。どこか投げやりで、爪を伸ばし、髭は伸ばすでもなく剃るでもなく無精髭。髪を風になびかせ、眼差しは深く気高く虚ろで哀しく、唇は人間への軽蔑にゆがむ。心はバイロン風に物憂く、存在の嫌悪と神秘に耽溺する。そんな風でならなければならなかった。」
引用:『美女の歴史』知の再発見双書82
時代によって変わる美人、美容・化粧法について述べた1冊から。19Cの話とはいえ、こんな男性ヤダー!
しかし、誰だ?こんな文章書いたのは!何度読んでも笑いがこみあげてきてしまう(笑)
最後に
というわけで、昔のメモからの心に残る文章、名言、詩などを取り上げました。今でも、名言集など探して読んだりするのですが、若い時分に読んだものとでは、またチョイスが違ってきています。
昔のメモを作ることはもうできないし、昔の自分からの贈り物のようで、今では捨てることができないものです。そして、今残すメモは20年後の自分に意図せず、また新鮮な驚きを与えるのだろうな、と思っています。
とりとめもなく拾った言葉ですが、何かしら面白かったなら、とても嬉しいです。また、「言葉集め」をしている私に、飛び切りの言葉を教えて下さる方がいたら、これまたとても嬉しいことです!
ということで、以上、『面白い名言を集めました!』でした!ではまた!
以下のブログでは、収集した「面白い本のタイトル」について書いています。